干渉
正弦波の合成
点Pで二つの正弦波$ \ y_1=A_1\sin \theta _1 \ $、$ \ y_2=A_2\sin \theta _2 \ $が重なる場合を考える。このとき合成波$ \ y \ $の波形はどうなるだろうか。
正弦波とは等速円運動の正射影で考えられるから、波は次の図のようにベクトルを用いて考えるとイメージしやすい。
ちなみに波をベクトルの回転で考え$ \ y \ $軸への射影で捉える考え方は、波を複素数表示で考えることに対応している。すなわち、
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
y'_1= A_1(\cos \theta _1 + i\sin \theta _1)\\
y'_2= A_2(\cos \theta _2 + i\sin \theta _2)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
と表記すると、物理的な意味があるのは虚部のみであるが、オイラーの公式より$ \ y'_1 = A_1 e^{i\theta _1} \ $のように書け計算が楽になるのでよく用いられる。
上図より、合成波の振幅は
\begin{eqnarray}
A^2
&=& \vert \boldsymbol{A_1} + \boldsymbol{A_2} \vert ^2 \\
&=& A^2_1 + A^2_2 + 2\boldsymbol{A_1} \cdot \boldsymbol{A_2} \\
&=& A^2_1 + A^2_2 + 2A_1A_2\cos (\theta_1-\theta_2) \tag{1}
\end{eqnarray}
となる。
可干渉性
合成波の振幅は(1)で書けることがわかった。よって合成波の振幅は、二つ波の位相差に依存していることが分かる。この位相差が点Pにおいて一定値となれば、合成波の振幅は一定値を持つので、合成波も正弦波となる。このような場合、二つの波は干渉するといい、そのような波のことをコヒーレントな波という。
コヒーレントな波である条件を考えると、正弦波の章より角振動数$ \ \omega \ $、波数$ \ k \ $、初期位相$ \ \phi_1\ $、$ \ \phi_2\ $である波の位相差$ \ \theta_1 - \theta_2 \ $は、
\[\theta_1 - \theta_2=-k(x_1-x_2)+\phi_1-\phi_2\tag{2}\]
と書ける。右辺第一項はある特定の観測点では一定値をとるので、コヒーレントな波である条件は初期位相が確定値を持つことだとわかる。
光の場合、原子が励起状態から基底状態になる$ \ 10^{-8} \ $秒程度の間に発光するので、位相的につながっている波(波連)の長さが$ \ 1m \ $程度しかない。私たちはその波連の集合体を観測しているのであり、それぞれの波連は別原子からの発光であるから初期位相がばらばらである。そのため、一般に異なる光源からの光は干渉しない(インコヒーレント)。例えば二つの電球を用意して光を重ね合わせたところで干渉縞は見えない。光の干渉を見たいのならば、同一光源の光を分割し、合流させることで同一原子からの光を重ね合わせる必要がある。一方、水面波や力学的な波動の場合は初期位相が確定値を持つので干渉する。
干渉する場合
位相差が観測点で確定値を持つ場合干渉し、その振幅は
・$ \ \theta_1 - \theta_2 =2m\pi(m \in \mathbb{Z}) \ $のとき、二つの波は強め合い、
\[A_{max}= A_1+A_2 \tag{3}\]
・$ \ \theta_1 - \theta_2 =(2m+1)\pi \ $のとき、二つの波は弱め合い、
\[A_{min}= \vert A_1-A_2 \vert \tag{4}\]
のようになる。
干渉しない場合
位相差が観測点で確定値を持たない場合干渉せず、その振幅は
\begin{eqnarray}
\overline{A^2}
&=& A^2_1 + A^2_2 + 2A_1A_2\overline{\cos (\theta_1-\theta_2)} \\
&=& A^2_1 + A^2_2 \tag{5}
\end{eqnarray}
のようになる。したがって、観測強度$ \ I \ $は、
\[I = I_1 + I_2 \]
となり、元の波の単純強度和が観測される。